人生いろいろ、車生もいろいろ。

備後の道路脇で見つけた 朽ちゆく車たち。

凹み、錆び、コケ、ヒビ割れていても美しい 古き時代の宝物。

どんなドラマがあったのだろう…。

誰が呼んだか、草むらのヒーローたちを 小学6年M.Kくんが撮りました。

第87回

草ヒロ（廃車）data　■メーカー：ニッサン　■車種：ダットサンバネット （初代C120型コーチ2000SGXハイルーフ後期モデル8人乗りOD付5速フロアシフト）　■年代：1980年～1985年　■場所：井原市北部

「岡山の漫才番長」千鳥のノブの故郷でもある井原市北部の町。
吉備高原の南端に位置するここは町の大半が丘陵と山林である。
ロマンチック街道313から脇道にそれ、少し登った高原集落。
周りには艶やかな緑の葉と熟れる前の青い実がなるみかんの木がポツポツ残り、当時の果樹園農家を偲ばせています。
昔みかん畑だったであろうなだらかな斜面に、草ヒロ界では倉庫の定番ともいえるキミを見つけました。
うんうん、目の縁がメッキでおでこにニッサンのロゴ。
３兄弟存在していたバネットのうち、キミは角目４灯がかっこいいおとんぼーのダットサンだね。
木々草々の緑と補色関係にあるみかん色の鮮やかな“Z20”デカールが、甘くてエキゾチックな雰囲気を醸し出し、カリフォルニアミラーや最上級スポーティーグレード“SGX”エンブレムが誇らしげ。
それもそのはず、キミはワンボックスGTと呼ばれ、高性能Z20エンジンの強靭なパワーにフロアシフト、本革巻風ステアリング、タコメーターまでも装備したGT感覚に加えて、助手席リクライニング機構や回転対座シートのあるラグジュアリーな居住空間を併せ持つ、スゴいヤツなのだ。
ライバルのタウンエースやライトエースたちと80年代のワンボックスブームを巻き起こし、アウトドアやレジャーの足として大いに重宝され大人気だったよね。
ここでも忙しい収穫期にはみんな車内の回転対座シートで昼飯や休憩をしていたんだろうね。
そんなキミも今やタイヤを外され、もう走れはしないけれど、倉庫として健気に頑張っています。
さほど劣化も進んでいなく、まだまだ草ヒロ界では青二歳の彼ですが、ゆっくりと時間だけが流れていくこの場所で、じっくり熟してよりイイ味が出てくることでしょう。

ちょっとうんちく