人生いろいろ、車生もいろいろ。
備後の道路脇で見つけた 朽ちゆく車たち。
凹み、錆び、コケ、ヒビ割れていても美しい 古き時代の宝物。
どんなドラマがあったのだろう…。
誰が呼んだか、草むらのヒーローたちを 小学5年M.Kくんが撮りました。
第29回
草ヒロ(廃車)data ■メーカー:ダイハツ ■車種:デルタワイドバン(初代)5ドア・標準ルーフ1200 ■年代:1976年〜1982年 ■場所:井原市西部
山肌を覆うように広がる古戦場跡近くのぶどう畑。
お地蔵さんの隣の柿の木の木陰に隠れているぱっちりお目々の彼女がいました。
タウンエースでも、ライトエースでもなく、珍しいデルタワイドです。
フロントエンブレムが今でも誇らしげに“ダイハツ”と主張しています。
あえてトヨタでない所がたまらないという方も多いのでは…。
違うのはフロントマスクとエンブレム程度で、姉妹のタウンエースとは3サイズまでもが全て一致する彼女。
富士通テン8トラックカセットステレオ、ステッキタイプのサイドブレーキや吊り下げ式のクーラーなどのレトロなアクセサリーは懐かしさいっぱい。
当時ふとん店の車として活躍していた彼女のボディは今やサビ色に包まれ、畑の隅で映えていました。
まさかの希少な彼女に会えて、心に沁みる嬉しさがありました。
ちょっとうんちく
1976年10月に登場したトヨタ タウンエースのOEM車として誕生したダイハツ デルタワイドバン。
ボディ寸法、ホイールベースなどはタウンエースと完全に一致し、違うのはフロントマスクとエンブレム程度。
ライト周りの穴の方向が縦がデルタワイドバン、横がタウンエースというふうに覚えていた。
ヘッドライトは丸型の2灯式で、フロントの中央にはダイハツのエンブレムが装着されていました。
ワゴンは4ドア仕様のみでしたが、バンには5ドア仕様があり、リアの両側にスライドドアを持ち、左右からの荷物の出し入れや狭い一方通行路で右側に積み下ろしする場合でも、作業はラクでスピーディーに行えました。
バックドアは大きく開く一枚はねあげ式大型タイプで、雨の日にはゲートがひさしに早変わりして大変便利でした。
ビジネスのワイド化に応えるよう、便利で使いやすい設計になっていました。
使いやすさに徹底した荷室はバンの機能性を突き詰めたもので、ロングホイールベースと広いトレッドを活かし非常にワイドに設計され、扱いにくい長尺ものや嵩張る商品も難なく運べました。荷室寸法は長さ2100mm、幅1440mm、高さ1175mm。リアサスペンションは積荷をがっちりと受け止めるリーフスプリングを採用。より多く積み、より安全に運ぶバンの機能性を徹底的に追求した結論がすべてに活かされていました。
キャビンに座ると、まず目を奪われるワイドなフロントウィンドウ。フルキャブオーバーならではの視点の高さ、パノラマ視点と相まって、視野は格段に広がりました。快適、しかも安全なハイバックシートの運転席はラクな姿勢で操作できるハンドル角度で、肘周りはゆったりとし、足元もたっぷりスペースがとってありました。
インストルメントパネルはワゴンのブラウンとは違い、落ち着きのある黒に統一。頻繁に使うスイッチ類はステアリングコラムに集中一体化(マルチユース集中スイッチの採用)。右レバーにはライティング、ビーム切り替え、ターンシグナル、パッシングライトの操作を。左レバーにはワイパー、電動式ウォッシャーのスイッチを集め、操作に煩わしさがありませんでした。
隅々にバンの極致とも言える個性が光るデルタワイドバンでしたが、2001年に絶版になり、惜しまれながら姿を消しました。(昭和52年2月発行 ダイハツカタログ参考)
デルタワイドバン諸元表
全長 3990mm
全幅 1650mm
全高 1750mm
ホイールベース 2195mm
車両重量 996kg
車両総重量 1760kg
乗車定員 3名
最大積載量 600kg積み
モデル 1200cc5ドア デラックス
エンジン形式 3K直列4サイクル水冷OHV
最小回転半径 4.4m
総排気量 1166cc
最高出力 64ps / 5800rpm
最大トルク 9.2kg-m / 3600rpm
変速機 4速コラムAT
クラッチ 乾燥単板ダイヤフラム・機械式
サスペンション 前:ウィッシュボーン式コイルばね 後:車軸式半ダ円板ばね
ブレーキ 前:2リーディング 後:リーディング・トレーリング(自動調整)
令和4年、師走の慌ただしき時にも、ここには凛とした静謐な空気が漂っていました。
※懐かしい廃車たち(出来るだけ天然モノ)を小学生撮影隊と一緒にのんびりと探索・撮影・紹介している趣味コンテンツです。
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